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「時が止まったかと思えば、窓から外を見ると巨大な火柱が上がり、空には火の鳥が舞っていた。何事かと思い、山を降りると隣国の兵士達が横たわっている姿が目に入ったんだ」
白骨化していた部分は肉を取り戻し、やがて鎌を持つ指先まで元に戻った。
そこまで辿り着くと、ようやく仁の手が握り締めていた鎌を離す。
カランっと音を立てながら鎌が地面に落ちると同時に、王子は仁の額から手を離した。
「その先で、そなた達が得体の知れぬ何かと戦っていた。その時、よく思い出してみれば、私には時が止まった体験を幾度となく繰り返したような記憶がある。いや……何度も同じ日を迎えたような」
王子は捲っていた袖をゆっくりと降ろしながら、俺達の顔を見回した。
「何故だろう。私には幾度も同じ舞踏会を行った記憶がうっすらとあるのだ」
どういうことだ?
王子は呪いのことを知っているし、あの怪物と同じ謎の数字が彫られているし。
幾度も同じ舞踏会の記憶があるのは、クエストが繰り返されているからだよな。
挑戦者が何人もいれば、舞踏会は何度も行われている。
それはゲームならば、当然の流れだ。
俺達が返答に困っていると、王子は少し微笑みながら言った。
「そなた達が答えたくないならいいのだ。追求をしても意味のないことかもしれないからな」
確か、メビウスの輪の神が言っていた。
あれと同じようなことなのか?
『おそらく違うな』
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