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DIMを取り出して、時刻を確認してみると九時を示している。
大丈夫だ。時間には余裕がある。
虚ろげに山を登っていく王子。
その背中は、やはりかぐや姫の時に見た与作の姿と被さった。
あの時はかぐや姫が月に帰ってしまい、結局のところ二人を結ばせることが出来なかった。
今度こそ。
瞬時にシンデレラのストーリーを思い返してみる。
幾つか大事なポイントを押さえておけば大丈夫なはずだ。
まず隣国の王女との結婚を破談させるために、シンデレラを舞踏会に連れていき王子と出逢わせなければいけない。
二つ目は、王子にガラスの靴を拾わせること。
あの靴は、元々は王子の物だった。
王子もすぐに自分の物だと気づくはず。
そうなれば、俺達のところへ誰に渡したのか王子から訊いてくるはずだ。
そして、次の日。
ガラスの靴の持ち主を探しに、王子は城下町へ降りるはず。
もう片方の一足をそのままシンデレラに持たせておけば、あとは成り行きに従えば上手くいくはずだ。
『君にしては冴えているな』
「美沙!シンデレラのところへ行こう!杏奈は仁を連れて、先に城へ行っててくれ!」
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