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「そうだよな……なら、いいんだ」
不安を余所に、美沙は俺に負けんばかりに足を進める。
杞憂か。
山頂に辿り着くと、賑やかな声が聞こえてくる城を横切って城下町側に移動する。
中腹部から重なるように建ち並ぶ街。
シンデレラの家は、国の入口から少し進んだ場所に構えているため、ここから一番遠い場所と言っても間違いではない。
俺達は休む間もなく、城下町の坂を下ってシンデレラの家へ急いだ。
結局のところ、このクエストはプレイヤー自身が魔法使いにならなければいけない。
自然と導き出された答え。
王子とシンデレラは、与作とかぐや姫の状況と似ている気がした。
結ばれない立場に置かれた二人。
だからこそ、王子とシンデレラを結ぶことによって、あの時に出せなかった答えが見える気がしたんだ。
息が上がり、足腰に限界を感じた時、やっとシンデレラの家が見えてくる。
「はあ、はあ、着いたー!」
美沙も同じく肩で息をしていた。
聞こえてくる水車の回る音。
他の家は、舞踏会に行っているせいか灯りはついていない。
その代わりに、街の至るところに張り巡らされた電線のような縄に提灯が吊るされている。
シンデレラの家だけは灯りがついていた。
家の前まで辿り着くと、美沙は俺の前に立ってこう言った。
「和也。私に任せておいて」
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