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敵の表情は苦痛に埋もれている。
歯を食いしばり、顔面の筋肉を精一杯に歪ませると無数の目玉が潰れるように細まった。
敵の残った腕。
上の右腕が一本。下の左腕が一本。
その二本が俺を捉えようと襲いかかってくる。
速い!
スローモーションに感じていたスピードが急激に加速し、掴んだ感覚を狂わす。
俺は最初の腕を掻い潜り、敵の懐に歩み寄った。
『何してる!早く退け!』
違う!うまくタイミングが……。
右の上から迫り来る二本目の腕。
刃を盾に使い、俺は防御した。
手の平を当てられただけにも関わらず、全身を押し潰すかのような凄まじい威力。
途端に、足裏が地面に沈み込む。
『早く脱出しろ!攻撃は後回しだ!』
「も、もう一本……」
俺は刃に当たった敵の手の平に対抗して、押し返すために力を込めた。
ググググググと刃と鋼鉄の様に硬い手の平が擦れ合い、歪んだ音が響き渡る。
その力に勝ったかはわからない。
はっとした瞬間に、押さえつけてきた敵の掌を綺麗に弾き返していた。
さらに生まれる敵の隙。
もう一本!
『駄目だ!退け!』
弾き返した腕を斬り落とすために、刃を振り上げた時。
バランスを崩した敵の口から目映い光が放たれた。
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