545人が本棚に入れています
本棚に追加
終の型。真っ正面から敵と対峙した状況だと危険じゃないか?
そう心の中で言いながらも、俺は“終の型”を放つための体勢に入った。
『もう一度でも、一から三の型のどれかを使ってしまうと、終の型を使うための命力が足りなくなってしまう。いや……その必要はないかもしれない。見てみろ』
グラグラとよろめく敵。
垂れ下がった目玉の数々は、既に視線がどこに定まっているかわからない。
そのすぐ側では、仁が鎌を構えていた。
まるで風のような速さで姿を現した仁。
全ての物事をスローモーションのように遅く感じていたはずが、仁の動きだけは異常に早く感じる。
頭に被った獅子の鬣が揺らめく。
ぎらりと鋭く光る刃。
さらに柄と刃に描かれた椿の花がきらりと光った。
すると、柄を握り締めた手から白骨化が始まる。
醸し出された禍々しい黒い雰囲気。
心が不安になるような嫌な空気が流れる中、白骨化は一気に仁の胸辺りまで進んだ。
本能的にだろう。
重々しく禍々しい雰囲気と、危険を察知した敵が、残った二本の腕で防御しようとする。
しかし、その行動よりもほんの少し早く、構えていた鎌が敵へ向かって静かに振られた。
最初のコメントを投稿しよう!