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既に声すら発しない敵。切り裂かれた上体部は地面へゆっくりと崩れ落ちていく。
『よし。仕留めたな』
光刀の言葉が切れると共に、纏っていた水が白煙へと戻り始めた。
全身が重たい。
体の重さを全く感じていなかったせいか、水が解除されると共に何十kgもの重りを乗せられたような感覚だ。
多分、“終の型”使えば意識を失っていた。
「はあ……はあ……」
そんな矢先、苦しそうな息使いが耳に届く。
視線を上げると、仁が片手で腹を抱えるように苦しそうな声をあげていた。
「────!」
白骨化が戻っていない!?
攻撃を終えたにも関わらず、仁の腕から胸にかけての体は細い骨となったままだった。
それでも、鎌だけは握り締めている。
「仁!大丈夫か!」
俺が言葉を発すると共に走り出すと、杏奈と美沙も、よろめいて倒れそうな仁に慌てて駆け寄って支えた。
「はあ……はあ……はあ」
全身から噴き出す汗。その割りには異常に体が冷たい。
「大丈夫か!しっかりしろ」
乱れた呼吸が焦りを覚えさせる。
嫌な予感。
ふと視線を落としてみると、そこには白骨化が段々と広がっていく光景があった。
「杏奈!どうにかならないのか?」
俺の言葉に杏奈は仁の姿を見たまま口を噤む。
何だよ。これ。
パニックで頭が真っ白になった瞬間。
「私に任せろ」
背後から聞き覚えのある声がした。
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