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振り返ると、視界には意外な人物が映し出される。
「何でここに……」
あまりに予想外で、思わず茫然としてしまった。
美沙と杏奈も、勇みよく急いで走ってくる姿を目で追い掛けながら茫然とする。
その人物は、抱えた仁の側まで来ると袖を捲りながらこう言った。
「呪いの力を使いすぎたんだ。このままじゃ飲まれるぞ」
美沙はその言葉を聞いた後に、直ぐ様問いかける。
「どうしてここにいるの……」
そうだ。舞踏会にいるはず。
ましてや、作られたコンピューターキャラクター。
「王子様……」
最後に美沙は小さく呟いた。
その視線の先にいたのは、紛れもなくつい先刻まで一緒にいたあの王子。
王子が袖を捲ると、手の平には薄緑色の小さな光が灯る。
能力……?
「それを聞きたいのはこっちだ。これは一体、何が起こったんだ」
王子は周りを見渡しながらそう言った。
元々とは草原であったはずの地が、何もないまっさらな大地に。
さらに山の麓では、杏奈の洪水とマリアの攻撃に巻き沿いをくった隣国の兵士達が横たわっている。
王子は深刻な表情を浮かべながら、熱を調べるように薄緑色の光を灯した手の平で仁の額に優しく触れた。
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