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おじさんは階段を一段一段ゆっくりと登り、王子に近づいた。
「あの女性は魔女の力によって呪われているのです。0時になると、陽が沈むまではとてつもなく醜い顔に変わってしまう」
おじさんは、王子の瞳を真っ直ぐ見ながら語り続けた。
「そんな顔を王子様に見せたくないからこそ、あの女性は去ったのです」
「呪い?」
王子は不安そうな想いを、明らかに表情に出した。
「そうです。魔女の力によって。しかし、その魔女は我々が倒しました」
どんな話で繋ぐんだ。
『ここは奴に任せた方がいいだろうな』
「魔女を倒したなら呪いは解けたんじゃないのか?」
王子はおじさんの話に聞き入り、シンデレラを追うことはしなかった。
時間は王子が足を止めてから、30秒以上は経過している。
時間を稼ぐことに関しては、成功と言っていいだろう。
「いいえ。魔女は倒しても、呪いが解けることはありませんでした」
「呪いを解く方法はないのか?いや、私は彼女が醜い姿でも構わない。外見じゃないんだ。彼女が納得して、私と一緒に居てくれるなら」
おじさんは人差し指を立てて、こう答えた。
「愛する者との結婚。そうすれば、彼女の呪いは解けますよ」
愛する者との結婚。
物語のエンディングを意味しているのか。
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