496人が本棚に入れています
本棚に追加
おじさんの言葉に、王子は意味深に何度か頷いた。
「愛する者との結婚。そして、0時から陽が沈むまでの呪いか……」
王子はガラスの靴を見つめながら呟いた。
「この靴はそなた達に渡したものだ。何故、彼女が履いていたのか?愚問だな。彼女に渡したのは、そなた達以外にいないはず」
王子は靴を大事そうに手の平で抱えた。
「愛する者との結婚とは、彼女が私を愛していなければ呪いは解けないのか」
「どうするんですか?王子様。ちなみに私共は靴を渡した相手を話せません」
おじさんは少し楽しそうな表情で、王子に質問した。
それに対して、王子は直ぐ様、返答する。
「明日、国中の女性にこの靴を履いてもらおう。この靴のサイズにぴったりの者を探し出す。そして、もう片方の靴を持っている者が今夜、私と踊った女性だ。私は国の王子として、国民に意思を示さなければならない」
「王子。隣国のことだけど……」
ここで隣国の企みを話しておくのが一番良い。
そう考えた俺は口に出したが、王子は黙って首を横に振った。
「その事はだいたいわかっていたから話さなくてもいい。隣国の対処は、私の結婚で流れるだろう」
王子はシンデレラを追おうとはしなかった。
踵を返して、階段を登り始める。
「そなた達にも、是非来てほしい。明日の朝、国中を回るぞ」
王子の背中が物語っていたのは、何よりも固い意思。
こうして、舞踏会の夜が幕を閉じた。
夢の終わりは、あまりにも静かだった。
最初のコメントを投稿しよう!