夢の終わり

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おじさんの言葉に、王子は意味深に何度か頷いた。 「愛する者との結婚。そして、0時から陽が沈むまでの呪いか……」 王子はガラスの靴を見つめながら呟いた。 「この靴はそなた達に渡したものだ。何故、彼女が履いていたのか?愚問だな。彼女に渡したのは、そなた達以外にいないはず」 王子は靴を大事そうに手の平で抱えた。 「愛する者との結婚とは、彼女が私を愛していなければ呪いは解けないのか」 「どうするんですか?王子様。ちなみに私共は靴を渡した相手を話せません」 おじさんは少し楽しそうな表情で、王子に質問した。 それに対して、王子は直ぐ様、返答する。 「明日、国中の女性にこの靴を履いてもらおう。この靴のサイズにぴったりの者を探し出す。そして、もう片方の靴を持っている者が今夜、私と踊った女性だ。私は国の王子として、国民に意思を示さなければならない」 「王子。隣国のことだけど……」 ここで隣国の企みを話しておくのが一番良い。 そう考えた俺は口に出したが、王子は黙って首を横に振った。 「その事はだいたいわかっていたから話さなくてもいい。隣国の対処は、私の結婚で流れるだろう」 王子はシンデレラを追おうとはしなかった。 踵を返して、階段を登り始める。 「そなた達にも、是非来てほしい。明日の朝、国中を回るぞ」 王子の背中が物語っていたのは、何よりも固い意思。 こうして、舞踏会の夜が幕を閉じた。 夢の終わりは、あまりにも静かだった。
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