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「これに全部付き合うの?シンデレラのとこへ案内した方が早くない?」
早くも飽き始めた美沙が、こっそりと囁いてくる。
「仕方ないだろ。ストーリーを崩した時点で失敗なんだから。シンデレラの番が回ってくるまで素直に見守る方がいいよ」
その話を横で聞いていた杏奈が、女性に靴を履かせる姿を見ながら同じ様に囁いてくる。
「私も履いてみようかな。足のサイズ結構小さいし」
「やめとけ」
その冗談を聞いて、仁が少し笑いながら止めた。
よかった。
朝、杏奈に会った時、どことなく元気がないというか、何かあって思い詰めてた様な気がしたんだけど。
どうやら、俺の思い過ごしだったみたいだな。
杏奈はいつもと変わらずにいる。
それから坂を下りながらも、一件一件順繰りに周り続け、正午を過ぎ、やがて夕刻が近づき始める。
王様、大臣、護衛の兵士数名の全員が、半ば諦めた様子で、靴を履かせることが流れ作業になっている。
「よし。次だ」
その中でも、王子だけは一切の緩みがなかった。
いい加減な態度など見せずに、靴を履いてくれた女性に丁寧にお礼を述べてから次へ行く。
「すごいよねー」
美沙はそんな王子を仕切りに関心していた。
そして、夕焼けが空に広がるまでの時刻になった頃、とうとうシンデレラの家の番が回ってきた。
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