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「王子。もし、この女性が王子の想う人物なら、もう片方のガラスの靴を持っているはず。それが王子と踊った唯一の証拠」
大丈夫だ。シンデレラはもう片方の靴を持っているはず。
シンデレラ。早くガラスの靴を。
気持ちが舞い上がった瞬間だった。
「────!」
室内に、お皿か何かを割った時の様な高い音が響き渡る。
不協和音。嫌な予感。
俺は音が鳴った方へ視線を向けた。
その光景を見て、体が凍りつく。
寒気が走り、全身に何とも言えない冷たいものが広がった。
「ごめんなさい。花瓶を割ってしまいましたわ」
二階へ続く階段の麓で、継母は笑っている。
その足元では、明らかにガラスの靴だったはずの破片が散らばっていた。
やられた。継母は全て気づいていたんだ。
いなくなったのは、二階へガラスの靴を取りに行っていたから。
継母は、ガラスの破片を片付けることなく、ゆっくりとシンデレラへ近づく。
「シンデレラ……」
その口調は、まさに悪魔の様な冷たい呼び声。
「王子様との結婚なんて、素晴らしいことだわ。もし、貴方だとしたなら。早くもう片方の靴を持ってきなさい」
継母は勝ち誇った表情で、俺達を見渡してきた。
ガラスの靴が割られた?
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