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シンデレラは継母の顔を見上げた。
「お義母様……」
王様、王子、大臣の三人がシンデレラの動向に注目する。
ガラスの靴を割られたことによって、シンデレラが昨日の夜、王子と踊ったという証明は出来なくなってしまった。
「確かに……美しいとはいえ、もう片方の靴が無ければ……」
明らかに継母が割ったのは、もう片方のガラスの靴。
それだけは間違いないし、この場にいる誰もがそんなことはわかっている。
大臣が口にした言葉の意味は、おそらく証明する前にガラスの靴が無くなってしまったことが問題なのだ。
ここまで曲がることなく真っ直ぐで強い眼差しを持っていた王子さえも、落胆の色を見せた。
クエスト失敗……。
ここまで来て。
美沙は靴を履いたまましゃがむシンデレラに近づき、自分も屈み込んだ。
「ごめんね。シンデレラ……」
継母への怒りよりも先に生み出される感情。
美沙の瞳からは、変わらず涙が流れ続ける。
同時に、その静寂を破るかの様に一つのけたたましい声が響き渡った。
「嫌だああああああああああ!もうクエストに閉じ込められるのは!嫌だあああああああ!」
相変わらずギャップの激しいおじさんが、頭を抱えて発狂する。
もう打つ手なしかよ。
絶望。そんな空気が漂う中、シンデレラは美沙に対して、優しい微笑みを浮かべて口を開いた。
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