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「は、入らないわ!」
姉妹の一人が、ガラスの靴に足を突っ込むが明らかに大きさが合っていないので入らない。
「どきなさいよ!」
今度はもう一人の姉妹が、ガラスの靴に挑戦してみる。
両手を使い、足の甲を折り曲げて強引にガラスの靴に押し込んでいく。
「おやめください!壊れてしまいます!」
その光景を見ていた大臣が、慌ててそれを止めた。
継母が、一瞬だけ唇を噛み締めて悔しそうな顔をしたのを俺は見逃さなかった。
大臣は継母に向かって話しかける。
「一応、貴方も履いてみますか?」
「結構ですわ」
嫌みとも取れる大臣の言葉に対して、継母は眉を歪ませて断った。
「それではお尋ねしますが、この家にいる娘は二人で間違いでしょうか?」
シンデレラはいない。
違う。あと一人いるはずだ。
継母の返事に僅かな期待を抱いた時、次の瞬間に放たれた言葉は耳を疑うものだった。
「はい。娘は二人でございます」
継母は平然とした様子で、大臣にそう答える。
「ご協力ありがとうございました。王子。この家は以上でございます」
なっ!何なんだ。
『どうするんだ。このままだと、あの女が靴を履けないぞ』
強引にいけば、クエスト失敗の可能性がある。
それでも、ここは言った方がいいんじゃないだろうか。
そう思い、慌てて口を開こうとした時。
俺よりも先に美沙が大臣に向かって声を出した。
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