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「ちょっとー!もう一人いるはずよ!」
突然のあまりに凄い剣幕に、思わず大臣は竦(すく)んだようだった。
美沙は、キッと鋭い視線を継母に向ける。
継母は美沙に負けず劣らず、見下ろしながら冷たい視線を返した。
大臣は焦った様子でキョロキョロと視線を動かし、美沙と継母を交互に見る。
しかし、そんなやり取りは一瞬で終わることになる。
王子は、美沙が放った言葉を逃さなかった。
「本当にもう一人いるのか?」
王子は玄関から足を進め、継母に詰め寄る。
その雰囲気は、まさしく国の頂点に立つ者に必要であろう王者の風格。
質問の答えを偽ることは、絶対に出来ないと悟らさせるのには、その一言で十分だった。
継母は観念したかのか、小さい頷いた。
「すぐに連れてきなさい」
王子の命令に継母は、少し表情を歪ませながら答えた。
「し、しかし、王子様。お言葉なのですが、もう一人の娘は、恥ずかしい話ではありますが大変不潔なのでございます。伸びきった髪の毛に、ずっと同じ服を着ているせいかボロボロになっておりまして……。我が家の恥として隠しました。あんな子が、王子様と踊ったなどということは絶対にありえません」
王子は継母の言葉を、ちゃんと聞いている気配は全くなかった。
「例外はない。早く連れて参れ」
継母は王子が退かないとわかったのか、観念して口を開いた。
「シンデレラ……シンデレラ!シンデレラ!二階から降りてきなさい!」
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