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継母の怒りさえ混じった口調と同時に、その場にいる全員が階段へ視線を集めた。
一瞬の静けさ。そこへ、階段を降りる小さな足音が響き渡る。
すぐに、踊り場へ人影が現れた。
「シンデレラ……」
美沙の切なさ混じった声。
予想通りと言うべきか、シンデレラは、美しかった昨日の舞踏会の姿とは打って変わり、いつものあの姿だった。
ボロボロの服から伸びた長い手足は輝くように白く美しいが、顔はやはりボサボサの長い髪によって隠されている。
一段、一段、ゆっくりと階段を降りるシンデレラ。
大臣が、明らかに面倒そうな顔をしたのを俺は見逃さなかった。
「名前は?」
皆の輪のすぐ側まで近づいてきたシンデレラに対して、大臣が質問をする。
「シンデレラと申します」
大臣は靴を持った兵士に対して、目配せをしながら続けた。
「え~、王子の婚約者を探しておりまして、この靴の大きさに合う人間を探しております。さらに、もう片方の靴を持った人間を。履いてもらうわけですが、その前に決まりとしてお顔を見せてください」
大臣の言葉に、シンデレラが何度か頷く。
しかし、シンデレラは髪をかきあげて顔を見せようとはしなかった。
どうしたんだろう。
「さあ。顔をお見せください」
大臣の催促と共に、継母の鋭い視線がシンデレラへ突き刺さる。
すると、シンデレラは少し遠慮がちに隠していた顔を見せた。
「────!」
そこに現れたのは、昨日とは別人の女性。
皮膚が爛れ、顔全体の形が明らかに歪んでいる。
まさか……おじさんが話していた呪いのことは本当だった?
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