夢の終わり-2

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頬を伝う透明な細長い線。 美沙の瞳からは涙が溢れていた。 そんな美沙の姿を見て、俺も息苦しく熱い何かが込み上げてくる。 「唯一の肉親なのに……。血が繋がっていなかったとしても、同じ屋根の下で暮らす自分の娘じゃない」 そうだ……。 線と線が繋がる様に、ある一つの想い出が蘇った。 何で、もっと早く気が付かなかったのだろう。 美沙が、シンデレラに対してこんなにも感情移入しているのは、大きな理由があるからじゃないか。 私の両親は血が繋がっていない。 そう美沙から聞かされたのは、今から二、三年前頃だった気がする。 たまたま自分の戸籍謄本からわかったらしい。 確か、旧姓は黒田美沙。 美沙は今の両親に、大切に育ててもらっているから特別気にしていないと言っていた。 でも、そんな自分の境遇と、シンデレラを重ね合わせていたからこそ、美沙にとっては初めから他人事だと思えなかったのだろう。 「よせ!美沙!」 涙を流しながら、継母に掴みかかろとした美沙を仁が止める。 予想外の事態。 不意に高鳴る鼓動。 『この場で、手を出せば途端にクエスト終了の可能性もある。落ち着いて考えるんだ』 シンデレラと王子が結ばれる方法を!
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