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「まあ、何て下品な子でしょう」
継母は掴みかかろうとした美沙に対して、蔑んだ目を向けた。
その時、ある一つの考えが過って、無意識に俺はシンデレラにそっと近づいた。
「王子様。治療をお願いします」
「なっ!」
俺の言葉に、直ぐ様、大臣が怒りを表情に出す。
上手くいくかはわからない。
「無礼者!王子にその様な願いを庶民が請うとはあってはならないこと」
昨日の夜、仁を治療したのは王子だった。
王子ならシンデレラの傷を治療出来るかもしれない。
「その様な姿をした者に王子が治療をするなど、あってはならないことだ!行きますぞ!王子!」
すると、王子は大臣の言葉に反応せず、そっとシンデレラの側まで歩み寄り膝をついた。
「そなたの傷。私に治させてくれないか」
王子が片手でシンデレラの足首に触れると、優しい光が包み込み始める。
「その瞳。見覚えがある。いや、はっきりと……」
もう片方の手をシンデレラの顔に。
驚いたことに、まるで作り直すかの様にシンデレラの傷が治り始める。
これで上手くいくはず。
みるみるうちに、美しくなり始めるシンデレラ。
「信じられない……」
大臣はその姿に息を飲んだ。
シンデレラの足の腫れが引きはじめ、段々とガラスの靴に収まっていく。
まさに一瞬の出来事。
俺は勝ち誇りながらも、継母の方へ視線を向けた。
しかし、継母の姿が見当たらなかった。
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