524人が本棚に入れています
本棚に追加
「わかった。行こう」
背後から耳を疑う様な言葉が聞こえてくる。
声の主は勿論、ヒカルだった。
直ぐ様、ヒカルを見ると、既に決意を秘めた瞳を浮かべていた。
あまりに早すぎる即決即断。
「敵が向こうから話し合いのきっかけを与えてくれてるんだ。ここで行かなきゃ話し合いが進まないしな」
こうなってしまっては、ヒカルは誰の言葉にも耳を貸さない。
それは長年、付き合ってきてわかっている。
「天海。アレクサンドロスに一人で行かせると返してくれ」
「でも……」
天海はヒカルの言葉に、明らかな戸惑いを見せた。
ルイは少しきつめな口調でヒカルに言い放つ。
「いや、一人で行くのは危険でしょー!」
ヒカルがブラックアウトの“終着地”を目指しているのは、たった一人の女性のため。
そのためだけに、前に進み続けている。
ここにいる全員が、ヒカルに救われた立場の人間達だ。
だからこそ、恩返しの意味を含めてもヒカルの望むことならと、その目的のために皆で進み続けている。
だが同時に、どん底から這い上がらせてくれた希望の光であるヒカルの存在を失うわけにはいかない想いもあるんだ。
だからこそ、万が一があってはいけない。
「天海。頼む……」
しかし、ヒカルの言葉に反対は出ない。
天海は戸惑った様子のまま、パソコンの操作を始めた。
最初のコメントを投稿しよう!