レッドキングダム

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圧倒的な光景に息を飲む。 リリルはあの人型の大きなロボットを、まるで蟻の様に踏み潰した。 躊躇いもなく。 大破したロボットの幾つかの残骸から、火の手が上がる。 ただただ、見守るしかない場面。 実際の象の足より遥かに大きいだろう。リリルの足は、ゆっくりと人間の足へ戻っていく。 すると、絨毯に乗ったアダムと呼ばれた男が後方に立っていたロボットを見ながら大声を出した。 「あっ!あいつ逃げるぞ!」 リリルの圧倒的な強さに怖れてか、敵は初めて自分の背を見せて走り始める。 半球体の形をした薄透明の膜。 リリルが何れ戦うことになるはずの敵チームのメンバーを殺したことから考えて、おそらく、この空間内はチーム対抗戦のルールが無効になるに違いない。 ロボットは機械音を奏でながら、膜の外に出ようと思い走った。 おじさんは相変わらず、腰を落としたまま呟く。 「う、うわさ。噂ですが……リリルの能力は“能力喰い”と聞いたことがあります。対象の体の中に潜み、能力を食い潰していく……。それがブラックアウト、最強の能力者の秘密……」 リリルは落下しながらも、逃げ出した敵を深く沈み込んだ冷たい瞳を浮かべ言った。 「逃がさないよー」 落下していたはずのリリルの体が、ひらりと宙に浮く。
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