アレクサンドロス

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大人しいけど、私達の中では誰よりも優しくて、人を想える子だった。 誰かが傷つけば自分のことの様に心配をして、誰かが涙を浮かべれば一緒に泣いてくれる。 汚れてしまった私達の中では、最後まで綺麗な気持ちを持っていた。 いつからだろう。 こんな風に考えるようになったのは。 私達が進む道は、本当に正しいのだろうか? 本当は間違っている? 私達が進んでいる道は。 いいえ。間違っていないはず。 ヒカルは名前の通り、私達に光を与えてくれた存在だ。 絶望が渦巻く暗い場所に、太陽をそっと置いてくれた人。 地球が太陽の周りに浮かぶ様に。 地球が太陽に従うのは、ごく自然なことだ。 太陽がいなくなれば、地球は生きていけない。 だから、私達はヒカルに出来ることをする。 はるちゃんは、その輪から外れただけなんだ。 「ブウゥウン」 こんな事を考えると、目頭が熱くなるのは何故? 『まみちゃん。ブラックアウトの世界にオーロラってあると思う?』 『オーロラ?どうだろう。ブラックアウトの世界は全てが作りモノだから』 『全てが作りモノだと見れないの?』 『オーロラは太陽風って呼ばれているプラズマ粒子が複雑な過程を経て……。うーん。どう考えてもないかな。だって、太陽も空も作り物だから』 不意に、そんな会話をしていたことを思い出した。
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