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何かしやがったら、ただじゃおかねえ。
そんなセリフを吐き出しそうな場面なのに、シンバはただ黙って私を見た。
その瞳に、憎悪が隠れているのは間違いない。
私は脅しを続けた。
「貴方が倒した人形。その一体を、今、レッドキングダムに忍びこませてるの。人形の視界は、このパソコンで見ることができるわ」
パソコンの画面を証拠としてシンバに見せる。
まあ、目的はヒカルの命令から生まれた偶然の賜物なんだけど。
「今から私の言う通りにしなさい。そうすれば、アレクサンドロスに報告はしない。約束するわ」
クールすぎるな。私。
こんな脅しをさらっと言っちゃうなんて。
これは弱点を探す必要なんてないかもしれないわ。
いいえ。これこそがシンバの弱点なのかも。
そこまで来て、ようやくシンバが口を開いた。
「何が望みだ?」
全てを受け入れる覚悟の瞳。
立派。立派だわ。
本当に守るかわかりもしない約束を、シンバは無条件で受け入れる。
私に、誠意を見せて約束を守る義理を作るつもりね。
「そうねえ」
シンバの瞳に恐怖はない。
「自分の両手首を切り落としなさい」
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