アダム

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「戻ってきたんですね」 俺の言葉にシンバさんは一度頷いてから口を開いた。 「ああ。奴らの中に強制クエストを引き起こさせる能力者がいた。ブラックアウトのシステムにハッキングをかけて、クエストを占領したんだ」 シンバさんの口から発せられたのは、思いもよらない内容。 クエストを占領? そんな無敵な能力あるの? そんなの想像すらしなかったんだけど。 「向こうで待ち伏せされていたってことですか?」 シンバさんの長い髪が風でなびく。 「そうだ。状況を理解した時はさすがに焦ったな。アレクサンドロスには他のチームが加担している。能力だから運営側も目を瞑っているんだろう」 一つ疑問が浮かぶ。 クエストを自由に操れるとなれば、クリアの条件も変えられる可能性が高い。 さらに、その状況を作り出せるなら、向こうで少なからず複数人が待ち伏せしていたはずだ。 レッドキングダムのシンバさんとわかって拉致したんだ。 よっぽどの実力者がいたはず。 どうやって条件をクリアしたんだ? 「倒せたんですか?その能力者を」 シンバさんは、その問いに対して今度は首を横に振った。 「いいや」 「じゃあ、どうやって帰ってきたんですか?」 「それは秘密だ」 シンバさんは、濃霧に包まれたポセイドンを遠い目で眺めてそう言った。
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