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小さい時、よくお父さんとお母さんとお兄ちゃんでお出かけをした。
水族館や動物園や遊園地。色々な場所へ沢山行って、家族みんなで笑っていたのが懐かしい。
ねえ、アイス食べたい
真夏の暑い日。遊園地でねだると、お父さんとお母さんは、私とお兄ちゃんに一つずつソフトクリームを買ってくれた。
私はソフトクリームを食べるのが下手くそだった。
すぐに垂れてきて、コーンを持つ指が汚れてしまう。
その点、兄は器用にソフトクリームを食べることができた。
そんな時、汚れているぞと父がハンカチで口元を拭ってくれる。
カラカラ。地面を擦る車輪の音。
ねえ、あれ乗りたい
勢いよく流れるように走るジェットコースター。
お母さんは、切なそうな顔をして首を横に振ってこう言った。
あれは大人になってから。
大人になれば乗れるの?
ええ。と答えるお母さん。
私にはわかっていた。
その言葉は嘘で、本当は大人になっても乗れないことを。
私もわかっていたけど、何となく意地悪になってお母さんに聞いちゃったんだ。
意地悪になったのは、お兄ちゃんの表情。
本当はお兄ちゃんはジェットコースターに乗りたいのに、我慢している。
表には出さないけど、私が羨ましがるから我慢しているんだ。
それが何となく。
お兄ちゃんの優しさだとわかっているのに。
ただ何となく切なくなって、意地悪な気持ちになっちゃったんだ。
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