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お兄ちゃんは、本当にいつも私に優しかった。
同時にその優しい笑顔が、私は世界で一番大好きだった。
あの笑顔は、写真のように今も鮮明に覚えている。
その笑顔と優しさに、私は何度救われたことだろう。
家族でのお出かけ。私の中で一番楽しかった想い出。
お父さんとお母さんとお兄ちゃんに包まれた想い出は、心の中で残る最も暖かい場所。
ある日。
お父さんとお母さんが離婚することになった。
お母さんは私に言った。
パパとお兄ちゃんはね、別の場所で暮らすことになったの
どうして?
離ればなれになる意味が、その時の私にはよくわからない。
お父さんとお兄ちゃんは、遠くで暮らさなきゃいけないの。
どうして、お父さんとお兄ちゃんは別の場所で暮らすの?
それは大人になったらわかるわ
嘘! 大人になってもわからない
今でも、喋りながら車輪を強く握り締めた時の感覚は忘れていない。
どうして? 私が悪いことをしたから?
違うわ。あなたは何も悪くないわ。
いや。お父さんとお兄ちゃんと離れるの嫌。
ずっと会えないわけじゃないわ。
嫌。嫌。どうして?
どうして? 私の目が青くて学校で虐められたから?
違うわ。目の色は関係ない。大丈夫よ。ずっと会えないわけじゃない。
それが家族の崩壊だと理解するのには、だいぶ時間がかかった。
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