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敵が何の能力を使ったかはわからない。
だが、焼け尽くす熱が全身を包み込んだ。
視界は、目映い光で埋めつくされる。
俺は力を込めて、ミケランジェロがいる位置に向かって斬り込んだ。
振り下ろすと同時に感じる確かな感触。
だが、思っていたより攻撃力がない。
何故だ?
あと一歩……あと一歩踏み込まないと。
その時、爪先が地面から離れて、体は宙に投げ出される。
「うわっ」
視界はぐるぐると回り、地面に強打して体が何度も転がった。
くそっ。
だけど、不思議なことに体は思っていたよりも痛みはない。
死すら覚悟した瞬間だったのに……。
俺は状況を理解するために、鉛のように重たい体を動かしてすかさず立ち上がった。
「くっ」
ミケランジェロは、その場から立ったままだった。
ただ数秒前と違うのは、肩を押さえて少し俯いている。
押さえた指の隙間からは、夥しい血が滴り落ちていた。
「この僕が……こんな雑魚に……」
俺は大した怪我をしていない。
光刀の力は全て刃に集めたはず。
生身であんな攻撃を喰らったら、俺は死んでいるはずだ。
その理由はすぐにわかった。
『死んでいたぞ』
光刀だった。
『私が勝手に判断した。あの攻撃をまともに受けていたら、君は死んでいた。だから、刃による攻撃を最小限に抑えて、全力で君の体を守ったんだ』
光刀の口調は、いつもと変わらず冷静なはずなのに、どこか怒っているような気がする。
『一人で戦っているんじゃないんだ。勝手に突っ走るなよ』
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