452人が本棚に入れています
本棚に追加
─────羽柴ルイ─────
渋谷和也の攻撃が失敗し、もうどうしようもなくなった。
ミケランジェロの作戦は、あたしのバカな脳じゃとても思いつかない。
まさか、間に新しい駒を作るなんて……。
詰んだと思った一手は、意図も簡単に粉砕される。
ミケランジェロの強さは、あたしじゃ到底かなわない。
それは渋谷和也も同じ。
初めから答えは決まっていた。
あたしは、ここで死ぬ運命なのかもしれない。
それは戦わずしても、わかることだった。
ミケランジェロから感じる脅威。
あたしは、完全に戦意喪失に陥った。
その矢先のことだった。
少し離れた場所で、一筋の光が放たれる。
直後、何もない空間にガラスに入るようなヒビが入った。
それは、穴を開くように広がっていく。
やっと来やがった……。
正義のヒーローとか信じたことある?
白馬に跨がった王子様とか迷信でしょ。
あまりの嬉しさに、自然と溢れた涙が頬を伝う。
ポケットに入れてあるDIMは、電話をかけたまんま。
絶対に見つけてくれると信じていた。
「待たせたな」
それは、白馬に跨がる王子様とはかけ離れているかもしれない。
いかついサングラスに、整ったスーツ姿とごつい体。
あたしにとっては王子様に見える。
「遅くなってすまないな」
開かれた穴から現れたのは。
二宮だった。
最初のコメントを投稿しよう!