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ミケランジェロは、あたしの胸ぐらを掴みぐいっと引き寄せた。
駄目だ。手以外は実体じゃない。今、力を使っても奴には攻撃が通用しない。
「認めたんだよ。僕が。だから殺さないであげるよ」
不愉快な奴の声。
「せっかくだから種明かしをしよう。ユキヤは僕の自慢の人形のうちの一体だ。あの子は特殊でね。心が歪んでるから気に入ったんだ」
ユキヤは操られている。
それでか……。だから、おかしくなったのか。
ユキヤは、ここしばらく別人のようだった。
歪んだのは自然ではなく、人為的に。
こいつは人さえも操る能力を持っている。
ユキヤははるかを殺した。
いや、こいつに殺されたんだ。
体を操る能力が共通していることから、あたしには何となくわかる。
「そんなに怖い顔するなよ。正確に言えば、佐々木はるかを殺せと命じたわけじゃない。大切なものや愛するものを壊すような作りにしたんだ」
その言葉で、あたしの体はわなわなと震えた。
「君は大切な誰かには嘘しかつけないように作り替えるかな。あっ。そうそう、人形の作り方なんだけど……」
「ぺっ!」
あたしは、口に溜まった血を奴の顔に吐き出した。
「殺せよ」
そうだ。冷静になれば、ここで勝とうなんて考えが甘い。
これが最善の選択だ。
ユキヤのことは、ヒカル達がきっと何とかしてくれる。
今、一番いけないのは、あたしがみんなに迷惑をかけることだ。
それだけは避けなければいけない。
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