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「わかった……。ここは見逃そうじゃないか。退くんじゃない。見逃すんだ」
命力、心力共に落ち着き、ミケランジェロの戦闘態勢が解かれていく。
「まあ、あまり派手にやると、あとで怒られるだろうからな。仕方ない。仕方ない」
納得がいかなそうなミケランジェロだが、呟きながら自分を説得しているような素振りだ。
二宮は、あたしに近づいてくると屈んで言う。
「大丈夫か?」
あたしは頷いたが、相変わらず声は出ない。
くそっ。能力のことや、ユキヤのこと。
話さなきゃいけないことは、たくさんあるのに。
手も動かない。
これじゃあ、大切なことが伝えられないじゃないか。
二宮は黙ってあたしを抱えて持ち上げた。
さらに、二宮は渋谷和也にも穴の方へ行けと手で合図を送りながら歩き始める。
渋谷和也も素直に従うみたいだ。
あいつにも大事なことを話さなきゃいけないのに。
ユキヤのことを、みんなに知らせなきゃ。
背後に立つ諸悪の根源。
あいつがあたしたちのチームを狂わした。
二宮の大きな体は、安心感を与えてくれる。
背後からミケランジェロの声が聞こえてきた。
「二宮だっけ?君は近いうちに必ず殺すから」
二宮はその言葉に振り向かず、ただ前を見て歩き続ける。
伝えなきゃ。
伝えなきゃいけないのに。
声は出ない。
あたしは目映い光に包まれた。
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