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機動兵器は、崩れた家の瓦礫を退けて起き上がった。
損傷は、数パーセントと言ったところか。
まだまだ大丈夫だ。
その姿を見下ろす国王の胸に出来た傷。
じわりと滲み出た血が広がり、服を真っ赤に染めていく。
国王は止血をする様子もなく、レオンを見ていた。
治療系の能力は持っていないのか。
それとも……気がついているのか?
僕は辺りを見回して、シンバの姿を探した。
あいつは、おそらく治療系のスペシャリストだ。
さっき、月のネックレスの所持者の手首を治したのを、僕はちゃんと見ていたぞ。
まあ、シンバが治療しても意味はないが、念のため警戒しなくてはならない。
視線を戻すと、国王の姿が消失していた。
姿を現したのは機動兵器の懐。
命力が膨大に込められた杖を構えていた。
再び、杖から命力が解放され、凄まじい重低音が鳴り響く。
機動兵器は拳で殴られたかのように、激しく吹き飛ばされた。
国王の猛攻は終わらない。
レオンが吹き飛ばされた先では、国王が既に待ち構えていて杖を構えている。
今度は、幾重にもなる光線が杖から放たれた。
光線が機動兵器に直撃すると、爆発を引き起こす。
いきなりの猛攻。おそらく、国王は気がついたんだ。
堪えろ。レオン。
国王は焦っているぞ。
その時、僕は確かに見た。
国王の胸の傷が自然と広がり、大量に出血した。
レオンの刀で斬られた者は、死ぬまで傷口が広がり続ける。
あれは、敵を侵食する傷だ。
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