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─────羽柴ルイ─────
「あー」
二週間はそれぞれ自由行動だって言うから、たまには気分転換にマニーゴッドへ遊びに行こうと思ってここまで来たのに。
イタリアの港に隣接した小さな村。
到着したら、その日はその村に泊まるのがいつもの流れだ。
そして、そこで開かれているストリートファイトに参加するのも、これまたいつもの流れ。
お小遣い稼ぎになるし、マニーゴッドまでの送りがつくしね。
徒歩のほうが全然、速いんだけど。
あのトラックの荷台、マジで汗くさいし。
それでも車の方が全然楽だ。
「どうすんのかね? これ」
あたしは、その場の状況に冷静を装いながらも愕然としていた。
隣に腰かける空は、その様子に恐怖を覚えている。
おかしいとは思ったんだ。
一度も来たことがないシャルキーが、自ら一緒に行きたいなんて言い出したこと自体が……。
三人で別々にエントリーしたストリートファイト。
三人の中で始めに戦うことになったのは、シャルキーだった。
名前を呼ばれて金網の中に入るシャルキー。
それは、ストリートファイトが始まった直後のことだった。
審判の女が開始と言った瞬間、対戦相手の首がボトッと落ちたんだ。
殺しちゃいけないのがこのストリートファイトの特徴だけど、それ以前に能力を使ったこと自体が反則。
恐ろしかったのはその行為じゃなく、シャルキーの能力だ。
あたしたちはシャルキーの攻撃的な能力を初めて見た。
全く何の能力かわからなかった。
いや、殺した瞬間ですら目で追えなかったんだ。
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