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その瞬間、金棒を構えた男が凄まじい勢いでライアンの胸ぐらから手を離す。
その動きは何かに怯えるように、反射的に身を退いた感じがした。
何だ。ライアンが男の手を見た瞬間、寒気を感じるほど嫌な感じがした。
能力を使うつもりだったのか?
「暴力はいけません。せっかくのクエスト挑戦者にも関わらず、危うく……」
ライアンはよれよれになったワイシャツを直しながら、にこにことした顔をしている。
「貴方を殺しちゃうところだったじゃないですか」
金棒を構えた男は、再びライアンに飛びかかろうとはしなかった。
本能的にだろう。逆の立場で、俺があの男だとしても多分、行けない。
勘として言い様がないが、何となく嫌な感じがするんだ。
「はははっ。冗談だよ。つい、興奮しちまってな」
金棒を持った男は、固く強張った表情でライアンに言うと、また後ろへ身を引いて元の場所に戻った。
ライアンは変わらず穏やかな顔で頷く。
「大丈夫です。気にしないでください」
この男は穏やかなのに、薄気味悪い嫌な感じだ。
おそらく、金棒を持った男がライアンに再び飛びかかっていれば、間違いなく殺されていただろう。
金棒を持った男も実力は相当あるはずなのに、ライアンとはそれほどまでに差を感じた。
「さて、質問が無ければ、早速クエストボックスに行きましょう」
ライアンの言葉に従い、プレイヤー側はクエストボックスに移動することになった。
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