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港に降り立つと、そこには11の人間が先に待っていた。
そのうちの10人は、1人の男を囲うようにして立っている。
船に乗る前とは違い、殺伐とした空気なのをすぐに感じとれた。
囲うように立っていた10人が、一斉に俺の方へ視線を向けてくる。
その中の誰かが言った。
「生き残りはまだ居たのか」
囲まれるようにして立っている男も、にこにことした顔つきで俺を見てきた。
ワイシャツにズボン。手には上着を持っていて、サラリーマンのような服装をしている。
白に近い色をしたふわふわの髪にはパーマがかかっていた。
笑っているせいか目は細く感じる。
男の雰囲気は他の者たちとは異なり、緊張感が伝わってこなかった。
プレイヤーじゃない。
初めての感覚だった。
クエストに出てくるようなキャラクターでもなく、どこか別次元の不思議な感覚。
「貴方で最後ですね。これで定員の11人が全員揃いました」
男は高い声でそう言った。
囲うようにして立っている10人は、ワイシャツの男に視線を戻す。
ワイシャツの男は、変わらずにニコニコとした顔で話し始めた。
「それではここにいる11人の皆様に、ピノキオクエストリニューアルバージョンに挑戦していただきたいと思います。申し遅れました。僕はブラックアウト本部から派遣で来た“ライアン”と申します」
男が口にした言葉は、ほとんどの人間が意外だったはずだ。
この男は運営側の人間。
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