ピノキオクエスト

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─────渋谷和也───── その日は雨が降っていた。 大粒じゃなくて、細かく降る嫌な雨だ。 外の空気は生暖かくて、じめじめとしている。 俺はバーナードと一緒に高級車で、港へ向かっている最中だった。 「今夜21時。ステーション6の四番から出る大型客船が、ピノキオクエストのある“子供が自由に暮らせる国”へ行く。航海は僅か4時間。全ての客室が特等だそうだ」 バーナードはそう言いながら、懐から封筒を取り出して渡してくる。 中には、子供が自由に暮らせる国行きと書かれた乗船券が入っていた。 まるで、ミュージシャンのライブのような細長い一枚の紙切れ。 これに800万の価値が……。 間違えて破いたりしたら、再発行とかしてくれるのだろうか? 「ありがとうございます」 そんなくだらないことを考えつつ、俺は封筒を大事にポケットにしまった。 バーナードの家を出てから、30分は車に乗っている。 その間に車は二度、区域を分けるためのゲートを通った。 この町、広すぎるだろ。 三度目、ゲートを通ると、これまでとは違って、車の外は広々としている開けた景色が映し出される。 この先に区域を分けるための壁はない。 海だった。 「着いたぞ。和也くん。」 しばらく海沿いに進むと、車はゆっくりと停車する。 車を降りると、海の上には大きな船が浮かんでいた。
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