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どういうことだ?
気配を消しているのか?
『気付いたか。私も気になっていたんだ。減っているのは間違いない』
戦闘状態のように興奮しているならば達人に近い技術が必要だが、平常心なら命力をうまく利用すれば限りなく気配を消すことは可能だ。
だが、何のために?
仁のように正確な探査能力は持ち合わせていないから何となくしかわからないが、およそ20は減っている気がする。
殺されたのか?
もしくは、プレイヤー狙いの殺人狂でも乗り込んでいるのか?
既にクエストは始まっている?
一瞬にして様々な疑問が浮かび、手の平には汗が滲み出す。
だが、この静けさが不気味だった。
特に大きな騒ぎがあった様子はない。
俺は警戒しながらも、部屋の中へ入った。
『大丈夫だ。室内に人の気配はない』
光刀の言葉は安心感を与えてくれる。
室内は、真新しい絨毯が敷かれて、ホテルのような作りになっていた。
天蓋のついたベッドに、木目調の化粧台。
それに冷蔵庫が置かれている。
背筋が凍りつく感覚。
『また減っている。気を付けろよ。減っていることに気づいたことが敵に悟られれば、こちらに意識が向くかもしれない』
俺は扉と向かい合うような形で、壁に寄りかかって腰を降ろした。
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