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最も恐ろしいことは何か?
それは敵の殺意を感じないことだ。
静かに、そして迅速に。
まるで作業を行うかのように、殺戮は繰り返されている。
恐怖を感じてしまえば、敵に弱味を握られることになる。
落ち着け。
窓の外は海。侵入経路は、部屋と通路を繋ぐ扉しかないんだ。
寄りかかった壁から部屋の扉までは、約10メートルもある。
これだけの距離があれば、扉が開いた瞬間に反応できるはずだ。
気を落ち着けて、命力をたっぷりと溜め込むんだ。
『そうだ。扉が開いたら、その先にいるのは確実に敵だと思っていい。躊躇わずに斬れ』
神経を研ぎ澄ませると、徐々に周りの部屋の命力が感じ取れ始める。
両隣の部屋からは、それぞれ命力を感じるので、まだ生きている。
逆に言えば、どちらかの命力が消えた場合、限りなく敵は近いということだ。
正確に気配を探れるのは、隣の部屋までが限界だ。
その先の部屋になってしまうと、何となくしかわからない。
この異常事態に、何人が気づいているのだろうか?
もし、大半の人間が気づいているとすれば、敵の攻撃に何も対処法がないことになる。
俺は額の汗を拭った。
しかし、それと同時に起きてはならない事態が起こる。
右隣の部屋の命力が消えた……。
次は俺か…………?
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