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張り詰めた空気が弛むことはなかった。
ゆっくり休めと書かれていたものの、この状況では仮眠をとれるはずもなく、まだ何か起こるかもしれないという警戒心を抱いていた。
これが、もし策略だったら?
ここで油断した人物には、攻撃を仕掛ける。
普通なら警戒してもおかしい話ではない。
そう考えると眠れなかったが、特にそれ以降、自分の身に危険を感じるようなことは起きなかった。
何人が生き残ったのだろうか?
合格の紙を見てからは気にしないようにしていたが、船内の命力の数は減り続けている。
おそらく相当な数の人間が殺されたはずだ。
俺が生き残ったのは、運が良かったのと、光刀のおかげだろう。
考え事をしているうちに、気が付けば時刻は夜の1時になった。
到着したのか、独特の揺れが治まり、船の動きが停まる。
窓の外を見ると、変わらず暗い海が広がっていた。
窓に張りついて船の先の方へ視線を向けると、暗がりの中に港らしき場所が見える。
あれが子供が自由に暮らせる国。
そこからしばらく待っていると、部屋にはけたたましいブザー音が響き渡る。
俺は気を引き締め直して、客室から出て船を降りた。
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