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「なっ」
俺様は反射的に金棒を振った。
金棒は空を切る。
無意味な行動だが、それほどまでにあり得ない出来事が目の前で発生して本能的に身体が動いてしまった。
その行動に後悔しても手遅れだが、俺様は二、三歩小さく下がる。
な、なんで。ここに。
部屋の中。
俺様の数メートル先。
身長は俺様よりも高く、体つきもがっしりとしている見慣れたそれ。
押し込められるように部屋の中にいるせいか、外で見る時よりも大きく感じる。
俺様の目の前に現れたのは、オオカミだった。
ありえねえ。
何もない空間に突然現れやがった。
さっきまでは絶対にいなかった。
俺様は、この世の中に絶対なんて言葉は存在しないと思っていたが、これだけは絶対だ!
つい数秒前まではいなかったはずのオオカミが……。
思考がうまく働かない。
オオカミが現れたことを考えてもしょうがない。
オオカミは牙を剥き出しにして、首を動かして俺様の体を食いちぎりそうなほど大きな口で噛みついてきた。
慌てて、金棒で受け止める。
今は現状を乗り越えることに頭を切り替えねえといけねえのに、どうしてもいきなりオオカミが現れたことに考えがいっちまう。
今は昼の時間帯だから敵は来ねえはずなのに!
くそっ! くそっ!
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