犯人の存在

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俺様は金棒で牙を突き返した。 反動的に部屋の家具にぶつかり、激しい音を立てて倒れる。 こんなとこで戦ったら、宿舎がめちゃくちゃになっちまうぜ。 かまうもんか。 俺様の命が優先だろ。 この音に反応して、他の奴らも気がつくはずだ。 「うらぁ!」 俺様はオオカミの頭部を狙い、金棒を振り下ろした。 部屋の中というほとんど動けない状況のため、体の大きいオオカミは避ける術もなく、もろに金棒の打撃を受ける。 鈍い音が響き渡り、オオカミの体が大きくよろめく。 もう一度。 「うらぁ!」 俺様は、立て続けに金棒を振り下ろして殴り付けた。 オオカミの表情が歪み、頭の形が変わる。 それでも、なおもオオカミは倒れる雰囲気はなく、剥き出しになった牙を俺様に向けてきた。 仕方ねえ。能力を使うか。 【金剛力一殺・四倍力比重】 直撃した瞬間に、金棒が相手の体重の四倍の重さになり打撃を喰らわせる必殺技だ。 これは相手の体が大きければ大きいほど、打撃力が増す。 本当は熊の野郎にもお見舞いしてやりたがったが、その分、命力がそれに応じて減るからな。 金棒の打撃を喰らったオオカミは大きく倒れてる。 壁こそ崩れなかったが、狭い部屋に巨大なオオカミがいるのは何とも言えない光景だった。 血がどっぷりと壁についている。 この部屋はもう使えないな。 その時、ようやく扉が開き、もやし野郎とホワイトマジックが顔を出す。 二人とも部屋の中を見渡して、唖然としていた。
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