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頭を冷静に働かせる。
俺様以外のプレイヤーが死んだとして動くなら、もうすぐ敵が攻めてくる可能性がある。
騎士のビクトリアが言っていた黒い影だ。
今までと違い敵の数が多いことを考えて、クエストが終盤に差し掛かった可能性が高い。
そうだとしたなら、俺様に出来るのはまず逃げることだ。
せめて、宿舎で寝ているビクトリアを連れて。
日が昇るまで逃げるられれば、とりあえずの難は逃れることが出来るはず。
生き残れば、僅かでも希望が見えてくるはず。
時間がないのは明白だった。
いつ敵が来てもおかしくはない。
そうだ。もしかしたら、もやし野郎と、ホワイトマジックの女と、ジャネットの三人は懸命に敵を食い止めてくれているのかもしれないのだから。
仮に全員が相討ちで敵がもう来ないとしても、念のため逃げておくにこしたことはない。
俺様は、ビクトリアの部屋の扉を勢いよく開けた。
ベッドの上には、案の定、ビクトリアが寝ている。
「ビクトリア! すぐに逃げるぞ! 敵が攻めてくる可能性がある!」
俺様は興奮しながら思わずでかい声を出してしまい、ベッドの目の前まで近寄り、ビクトリアを起こして肩に手を回し抱えた。
「敵が……来る?」
ビクトリアは不思議そうな顔をして、俺様に訊いてきた。
抱えながらも慌ただしく、部屋から出る。
「そうだ。俺以外の全員が敵に殺られた可能性が高い」
外は、相変わらず静けさに満ちていた。
「本当にみんな死んだんですか?」
「ああ。もう二時間もみんな戻って来ねえからな!」
敵の気配はない。
問題はどこに逃げるかだ。
肩を回して抱えているビクトリア。
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