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─────渋谷和也─────
まさか、本当にガーネットの言った通りになるとは思わなかった。
俺たちの中に味方を殺している人が潜んでいるなんてこと自体が、最後まで半信半疑だったからだ。
さっきの戦闘でだいぶ力を消耗してしまった。
ビクトリアの正体を引きずりだすために、こっちも総攻撃に堪えるかなりのリスクを背負ったからな……。
正体を現したビクトリアは、マイケルの縄で拘束されている……。
これで安心のはずだ……。
しかし、異変はすぐに訪れた。
ビクトリアから光り輝く命力が解き放たれる。
「何だ?」
その雰囲気に、全員がビクトリアから距離をとった。
ただならぬ何か……。
そう察知した体が自然と動き、少しでも離れる。
俺はガーネットの言葉を思い出した。
オオカミやケンタウロスに残った命力は、微量ながらビクトリアの命力が混じっている気がするが、それよりも確かなのは……。
この中の、誰のものでもない命力が混じっていることだと。
「おいおい! どうなってやがんだ!」
アドモアがビクトリアを見ながら、怒鳴り声をあげた。
ビクトリアの体が巨大化し始め、拘束している縄が引きちぎられる。
『どうするんだ? ほとんど命力は残ってないぞ』
ビクトリアから放たれる圧倒的なまでの命力。
それは、明らかにビクトリアのものではなかった。
「おいおい! 俺様はこんなのごめんだぜ!」
我先にと、アドモアが背中を見せて走り始めた。
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