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「和也です。天草総長……」
俺が発した言葉に、天草総長は首を傾げて答える。
「総長か……。そう呼ばれるのも少し懐かしい気分になります」
生きていた。その事実が何故かわからないけど、胸をきつく締め付ける。
「さあて……。ゆっくり話す為には、まずはあいつを片付けないといけませんね」
そう言った矢先、地に這っていたビクトリアが重たい物をどかすように起き上がった。
「なめるなあああああ!」
怒号が空気をピリピリとさせる。
「威勢だけはいいようですね」
天草総長はゆらりと歩き、ビクトリアに近づいていく。
その背中姿には、かつての新撰組の羽織が重なった。
ビクトリアは形態を変えるごとに、確実に強くなっている……。
それだけは間違いない。
現に、今だって凄まじい命力を感じる。
そして、寒気が走るほどの威圧感と殺気。
あれに臆せず立ち向かえる天草総長は、やはり便りになると思った。
「いいですか? 私は手加減をしません。命を奪い合うわけですから。あなたも後悔のないように遠慮せずに来てください」
その圧倒的な余裕。
ジャネットの禍々しい雰囲気とは対象的に、天草総長の周りだけは空気が和やかな気がする。
「人を馬鹿にするのもいい加減にしろおぉお!」
怒り狂ったビクトリアが、天草総長に飛びかかる。
その途端、天草総長の体からは黒い命力が放たれた。
ジャネットと同じ……。
俺は息を飲んだ。
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