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辺りに漂う静寂。
雷光生に滅ぼされた敵は、塵となって空に舞いました。
「つぇえぇ!」
折れた金棒を持った男の人が、唖然とした顔で私を見てきます。
確かに、私は強いですが、まだまだです。
以前までなら、その言葉により自惚れていたかもしれませんが……。
まだまだ、沖田さんの全力には遠く及びません。
沖田総司。
彼は運営委員会のメンバーでありながら、スパイとして新撰組に潜り込んでいた男です。
新撰組を滅ぼしたブラックスターの手引きをしたのは、彼に違いありません。
優しそうな顔をして、みんなを騙していたんです。
そう思っていました。
しかし、敗北した時、彼は私に訊いてきたんです。
(生きたいか?)
と。
情けない話ですが、私は生きることを乞いました。
そして、両目と引き換えに私は生き延びたんです。
見間違いじゃなければ……。
私が最後に見た光景。
沖田さんは泣いていました。
生きたいか? と私に問うその声は絞るように苦しそうでした。
何故、泣いていたのか?
彼が泣いていた意味を問い詰めるために、今、私は戦っています。
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