476人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
話を終えた後、天草総長からガーネットを呼んできてほしいと頼まれた。
「次に会う時は、戦場かもしれませんね……」
どこか引っ掛かるような意味深な発言。
「戦場って……」
「そのまんまの言葉です……。私はそろそろクエストから出ますから」
「クエストから出られるんですか?」
「侵入してきたんだから、出ることも簡単にできます。ですが正式な参加ではないので、報酬を貰うことはできないのです。私がここに居ても意味はないですからね」
天草総長は、空を見上げながら言った。
遠くの空が、微かに明るみ始めている。
「人は何かを失った時に、その悲しみを大事にする生き物です。脆弱ですが、それを糧にして強くなります。しかし、時に潰れて立ち直れなくなる場合がある」
天草総長は、俺に真っ直ぐ視線を向けてきた。
「和夫さん。あなたは負けないでくださいね」
ヒーローって存在があるとするならば、
多分、こんな人のことをヒーローと言うのだろう。
人が本当にピンチの時に現れる救世主。
天草総長には、何度も命を救われたことになる。
「必ず、全員を取り戻します」
仁、美沙、杏奈を……。
「そうですね。世界中のプレイヤーが注目する死神狩りに、和夫さんがどんな行動を起こすのか楽しみにしていますよ」
天草総長は、この言葉を最後に。
俺がガーネットを呼んでいる間に、帰ったみたいだった。
最初のコメントを投稿しよう!