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子供が自由に暮らす国へ行くための港は、ゼペットさんが住む町を出て、二時間ほど歩いたところで到着した。
いや……歩いたと言うのは間違いで、ほとんどが走っていた気がする。
船の時間に間に合わない可能性があったからな。
まさか、森を抜けるのに、二時間もかかるとは想像もしていなかった。
「よし。船が来るまであと5分ほどのはずだ」
すっかりいつもと同じ雰囲気のマイケルが、腕の時計を確認しながらそう言う。
「はあ。はあ。船が来るまで休もうぜ」
アドモアは肩で息をしながら、尻餅をついた。
結局、残ったのは全部で五人。
ビクトリア戦後、ガーネットが頑張ってくれたおかげで、全員が怪我を完治させることができた。
ジャネットだけは拒んでいたが、結局は承諾する形でガーネットが治療をしたんだ。
少しだけ、皆の心の距離が近づいた気がする。
ビクトリアの死体は、丁重に皆と同じ墓場へ埋葬された。
そうなったのは、宿舎のビクトリアの部屋から出てきた日記が原因だった。
日記には、恋人をクエストで失ったことから、今回のクエストのことまでの全てが綴られており、それは壮絶以外の何でもなかった。
ビクトリアは自ら殺人を始めたわけではなく、強制的にやらなければならない立場にいたのだ。
そんな状況に追い込まれたら、自分だったらどうする?
俺なら……。
そんな理由もあってか、今となっては死んだビクトリアを憎む者がいるはずもなく、俺たちは自分たちが前へ進むためにここまで来たんだ……。
そして……。
船は到着した。
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