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そう言えば、夢を思い出した。
あの時、黒い穴の向こうには、花畑に囲まれたはるかがいたけど……。
実際には違っていた。
やっぱり俺の夢にしかすぎなかったんだ。
夢にしか……。現実は、あの状態だ……。
はるかを殺したのはコイツ。
悲しませたのも、コイツ。
「なあ、光刀」
ミケランジェロは凄まじい形相で、一直線で俺に向かって駆けてきた。
『何だ? 早く戦う体勢を整えよう』
足首だけをゴーストボディ化させて浮遊し、片手にははるかを刺したであろうナイフを持っている。
俺、初めて心の底から勝ちたいって思ったんだ。
ここだけは負けられないって思ったんだ。
『そうだな。その気持ちは私にも伝わってくるよ。ユキヤの時だって、君は何故あの女の子を殺したのか少なからず疑問を持っていたもんな。今回は迷いが一切見えない』
ここまで想ったのは、初めてだ。
何か、視界がおかしい……。
もやがかかったように、霞んで見える。
闘争心とは裏腹に、体の中が異常に冷たい。
ミケランジェロが、目の前でナイフを掲げていた。
自然と俺の左手が動く。
振り下ろされたナイフに対して、手の平で受け止めようとする俺。
石油式のストーブをつける時と似ている。
難しいけど、そんな感覚が体の中を走った。
『それは……』
手の平からは目映い光が放たれ、ナイフを弾き飛ばした。
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