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追っ手は、ミケランジェロが繰り出した二体の人形。
ブラッククイーンとホワイトキングは、凄まじい速さで山の斜面を駆け上がってきている。
山頂はまだまだ先だ……。
その速さから考えて、おそらく逃げ切ることは困難……。
戦うしかない。
選択肢はないんだ……。
そんな中、少しでも距離を離そうと俺たち三人は山を登り続けた。
地面にはびこる草と、細かな石が邪魔くさくて足に疲労感を与えていく。
「ガーネット! さっきの能力は使えないのか?」
マイケルが仕切りに後ろを振り返り、敵との距離を確認しながらガーネットに訊く。
「多分、難しいです。あれは手術で縫合する時に使用する糸を使って、てこの原理を利用し転ばせたんです。糸は自分で作り出した能力ですから強度は自由に変えられますが、刃物一本でもあれば、すぐに切られちゃいます。だから、あれは一度しか使えないんです」
砂浜で、ブラッククイーンを転ばせた時か。
ガーネットが突っ込んで行った時に、ブラッククイーンは不自然に横へ転んだんだ。
あれは予め仕込んであったからなのか……。
だからこそ、一度しか使えない。
「逃げきれないぞ!」
マイケルの言葉通り、既に敵との距離は十メートルほどまで狭まっていた。
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