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意思を汲み取るかの様に、光を放つ人の心。
俺は、クマのヌイグルミをじっと見た。
人の心から放たれた光が、クマのヌイグルミを包み込んでいく。
「ついに妻と会える」
隣いるバーナードさんは、待ちきれない想いを抑えきれず、その光に顔を近づけた。
はるかも、生き返らせることができるのだろうか?
生前、その人間が大事にしていたゆかりのある物を、手にいけなければならないハードルはあるけど……。
そんなのは、はるかの家からいくらでも見つかるはずだ。
その矢先、クマのヌイグルミが椅子から僅かに動いた。
クマの瞼が瞬き、二度、三度と繰り返されていく。
すると、今度は手と足が動き出す。
「おおっ!」
バーナードさんは驚きの声をあげて、その様子を見守った。
クマの口が小さく開く。
物が生物へ変化する光景は、驚愕に値するもので俺の心拍数も一気にはねあがった。
「あなた。お茶をいれたわよ」
その声は、間違いなくクマのヌイグルミの口の中から発せられた。
「イリシア……。イリシアなのか?」
おそらくバーナードさんの妻の名前だろう。
そう言いながら、バーナードさんは堪えきれなくなったのか、ヌイグルミの両肩を優しく掴む。
「私だ。私だよ! バーナードだよ」
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