唐突な不穏

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「今日は晴れているわね」 発せられた二言目。 一度目の言葉にも違和感を覚えたが、二度目で嫌な予感が働く。 感動すらしそうな再会にも関わらず、部屋の中には妙な緊張感みたいなものが走った。 「イリシア!」 再び呼び掛けるバーナードさん。 「あなた。何でクマのヌイグルミなんて買ってきてくれたの?」 「イリシア……何故、答えてくれないんだ……」 バーナードさんの表情は暗くなり、絶望感が漂った。 「何故だ……」 「あなた。私は幸せよ」 「イリシア……。何が幸せなんだ」 「入院しても、このヌイグルミがいるから寂しくないわ」 「うぅっ!」 バーナードさんは嗚咽を上げて、目頭を押さえた。 「病気で死ぬわけにはいかないわ。あなたは一人じゃ駄目だもの」 「私は君に会うために……」 「あなた。ありがとう」 「イリシア……イリシア……」 「あなた。ごめんなさい」 単調に喋り続けるヌイグルミ。 言葉ははっきり話しているのに、会話が成立しない。 部分部分だけを抜き出したような言葉。 光刀が言った通りだ。 人は生き返らない。 おそらく、人の心とは、死者の魂をゆかりのある物に甦らせることができるんじゃなくて、 ゆかりのある物を読み取って、話させる道具なんだろう。 心がどんよりとした。
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