271人が本棚に入れています
本棚に追加
こんなにも不条理な話はあるのだろうか。
ブラックアウトの非現実的な世界に浸って、何もかもが当たり前だと思っていた中で、もしかしたら人が生き返る話もすんなりと受け入れていた。
でも、それは嘘で。
ブラックアウトの技術を用いても、これが限界なのだろうか?
そんなことを、製作者側から伝えられている様な気がした。
はるかを生き返らせることは叶わない。
何故なら、人を生き返らせることは不可能だからだ。
それでも、バーナードさんは、俺に何度もありがとうの言葉を繰り返してくれた。
「元々、人を生き返らせることなんて不可能だったんだ。妻の声を聞けただけで十分だ。ありがとう。命を賭けてまで、私に答えをくれた君に感謝感謝しなければならない」
バーナードさんは泣きながらそう言ってくれた。
感謝の二文字。
ありがとうの言葉。
そこから伝わってくる重さに、逆に苦しくなった。
本当は、はるかが生き返ることを心のどこかで期待していたに違いない。
『人は生き返らないよ。それだけは叶わないんだ』
それから、俺はバーナードさんの家でゆっくりと休ませてもらい、次の日、優くんに会いに行くための準備を整えた。
そして……。
最初のコメントを投稿しよう!