唐突な不穏

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こんなにも不条理な話はあるのだろうか。 ブラックアウトの非現実的な世界に浸って、何もかもが当たり前だと思っていた中で、もしかしたら人が生き返る話もすんなりと受け入れていた。 でも、それは嘘で。 ブラックアウトの技術を用いても、これが限界なのだろうか? そんなことを、製作者側から伝えられている様な気がした。 はるかを生き返らせることは叶わない。 何故なら、人を生き返らせることは不可能だからだ。 それでも、バーナードさんは、俺に何度もありがとうの言葉を繰り返してくれた。 「元々、人を生き返らせることなんて不可能だったんだ。妻の声を聞けただけで十分だ。ありがとう。命を賭けてまで、私に答えをくれた君に感謝感謝しなければならない」 バーナードさんは泣きながらそう言ってくれた。 感謝の二文字。 ありがとうの言葉。 そこから伝わってくる重さに、逆に苦しくなった。 本当は、はるかが生き返ることを心のどこかで期待していたに違いない。 『人は生き返らないよ。それだけは叶わないんだ』 それから、俺はバーナードさんの家でゆっくりと休ませてもらい、次の日、優くんに会いに行くための準備を整えた。 そして……。
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