唐突な不穏

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天草総長は、ずかずかと俺に近づいてくると、背負っていたガーネットを乱暴に奪い取って揺さぶり始めた。 「た、だ、大丈夫ですか! ガーネットさん!」 その取り乱し方と揺さぶり方は、端から見ていて尋常ではなく、明らかに怪我人に対する行動ではない。 「て、手首がない! 一大事じゃないですか! 和夫君。やはりあなたに任せておくのは失敗でした」 両肩を持ち、前後に激しく揺さぶる天草総長。 表情だけは真剣さが伝わってくるのだが……。 「あ、天草、天草様……苦しいです……」 目が覚めたのか、ガーネットは苦しそうな声で言葉を発した。 「ガーネットさん! 大丈夫ですか?」 大丈夫なわけがないと思いながらも、俺は天草総長のやり取りを静観していた。 なおも天草総長は、ガーネットを揺さぶり続ける。 「し、死んじゃだめです! ガーネットさん! 一体、どうすれば。マニーゴッド内で一番の医者の手配を行うのがいいのか。ホワイトマジックに連れていくには時間がないし!」 すると、ジャネットは表情を変えることなく、冷たい声で天草総長に向かって言った。 「何で時間がないんだ? 医者を手配するよりも早いと思うが……」 「何、言ってるんですか! マニーゴッドからどれくらい遠いと思っているんですか!」 「それこそ、瞬間移動を使えばいいだろ」 「あ…………」 その的確なアドバイスに、天草総長は途端に固まった。
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